(2022年9月5日)3分でわかるシエラレオネ紹介シリーズ「人工妊娠中絶法編」Vol.14

NPO法人アラジを日ごろ支えてくださっている皆様、誠にありがとうございます。私たちNPO法人アラジは、シエラレオネ共和国において、困難な立場に置かれている子どもや大人たちへ、様々な支援事業を日々実施しています。

今月も、支援者の皆様に、3分でわかるシエラレオネ紹介をお届けします。

1. 人工妊娠中絶法

妊娠中絶とは、妊娠20週目以前に妊娠を終了させることとWHOは定義しています。

また、日本の母体保護法では、「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその付属物を母体外に排出すること」と人工妊娠中絶を定義しています。

多くの国で女性の権利として認められている一方で、法律上認められていない、あるいは厳しい条件下でのみ許されている国も少なくありません。

2022年6月に、アメリカで長年女性の権利として憲法上認められてきた人工妊娠中絶に関して、米連邦最高裁で判断が覆されたニュースもあったことから、近年の動向に関心がある方も多いかもしれません。

例外を一切認めない一部の国を除き、一般的に以下のようなことが言えます。

先進諸国では母体のリスクがあるときだけでなく、経済的・社会的理由や母親の要望に応じて行われる場合が多いのに対し、途上国や宗教的影響の強い国では、身体の健康が理由であっても、ましてや強姦の場合であっても中絶の権利が認められないことが普通とされています。

参考データ

2. シエラレオネの現状

シエラレオネでは、一般的に中絶基準が厳しいアフリカ諸国の中でも、特に厳しい基準を設けている国です。

そして、母体のリスク以外での中絶が認められていないがために、安全でない中絶を選ばざるを得なくなり、最悪の場合死亡するケースも多くあります。事実、シエラレオネの妊産婦死亡率は、10万人あたり約1,000名、その1割は危険な中絶(大量の抗生剤や麻薬を摂取)によるものというデータがあります。

この「産まざるを得ない状況」により、経済的基盤が不安定なままシングルマザーになり、男性側の支援も受けられず、自身の教育を諦めなければならない女性が後を絶ちません。

もし復学の機会を得たとしても、いじめや陰口と言った社会的なスティグマに苛まれ、結局彼女たちは孤立してしまうことになるのです。

3. より良い中絶環境に向けて

シエラレオネ、そして世界中で女性が人工中絶の権利を得るために、国際機関や国レベルでのアプローチが必要になります。実際にWHOは2022年3月に中絶に関する新たなガイドラインを策定し、女性の意思決定の尊重・医学的に不要な条件などを排除する方針を推奨しています。

しかしそれだけではなく、有効な避妊方法の普及活動や男性側の意識改革といった草の根レベルでの活動も必要ではないでしょうか。

実際にアラジでも、男子中高生を対象とした性教育プログラム「ハズバンドスクール」を通して、女性の権利・教育の重要性を男性側に知ってもらう活動を行っています。

人工妊娠中絶は、女性だけの問題ではないという意識がシエラレオネだけでなく、世界中に広まることを願ってやみません。

いかがでしたでしょうか?

また、来月も、シエラレオネ3分紹介シリーズをお届けしていきます!

3分でわかるシエラレオネ紹介♪編集

下里夢美

西村郁哉

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シエラレオネの男女間教育格差は、上記のような中絶の禁止だけが要因となっているのではありません。手に入らない避妊具、性教育の不足、性暴力など、その要因は多岐にわたり、約1.7割の10代の女の子がシングルマザーになることで、初等・中等教育の機会や、その後の夢への進路を失っていると言われています。

シエラレオネで8年間に渡り、教育支援活動を続けている私たちアラジは、シングルマザーの復学支援の他にも、3つのプログラムで、20,700名の子ども達への新たなアプローチを目指しています。アラジの仲間になっていただけませんか?

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(投稿)インターン 西村郁哉