2022年度 年次報告書
特定非営利活動法人Alazi Dream Project
目次
NPO法人アラジとは
NPO法人アラジ(正式名称:特定非営利活動法人Alazi Dream Project)は、西アフリカのシエラレオネ共和国で活動する国際協力NGOです。2014年に任意団体として創設、2017年にNPO法人化してから約9年間で、述べ2,004名の最貧困家庭の子どもたちに、公教育への復学機会を提供してきました。
子ども時代の教育格差を是正するべく、「誰もが夢に向かって努力できる社会の実現」をビジョンに、現地シエラレオネの人々の尊厳を守りながら真摯に活動を続けています。
代表挨拶
2022年度も、皆さまの継続したご支援誠にありがとうございました。
2022年度は、ソーシャルシップ2022の最終選考2団体に選ばれたことをきっかけに、リタワークス株式会社様に、寄付募集のランディングページを作成していただきました。また、みずほ銀行公益信託様、LUSH様、積水ハウス様、Panasonic様からのご支援もあり、多様な財源の確保だけではなく、ファンドレイジングチームをはじめとした、組織基盤の強化にも繋がりました。
私はというと、年子の出産後よりはじめて、そして2年ぶりにシエラレオネに渡航し、現地スタッフに涙あり、サプライズありで迎え入れられました。2022年5月と2023年2月の出張では、現地法人JaSiLe Foudationの現地人スタッフが、弱い立場にある子ども達の教育格差を是正しようと、現場で奮闘する姿を目の当たりにし、何度も感動しました。12,000kmも遠く離れた私たちは、育った環境も文化的背景も違うけれど、「誰もが夢に向かって努力することのできる社会」という共通のビジョンに向かって、距離や人種を超えて、日々できることを一つ一つクリアしていっています。
今では約350名のマンスリーサポーター、150名のボランティアさん、多くの企業様に支えられ、毎月約400人がアラジの継続サポートで学校に復学することができています。私たちがアプローチできているシエラレオネで課題を抱える子ども達は、全体の1%にも及びません。しかし、「最貧困家庭の子どもを見つけだし、現金給付をはじめとしたあらゆるサポートを届ける」ことを最も得意としており、ロールモデルとなれる事業を、今後しっかりと確立し、さらなるインパクトを起こしていきます。
「あの子に、笑顔が戻ってきた、それはADP Japan(アラジ)がいたからなのよ」
現地人スタッフがくれた言葉です。
それは紛れもなく、日本のスタッフ、サポーター、ボランティアの皆さん、お一人お一人の強い想いが創り出した「未来」です。
NPO法人アラジ
代表理事 下里 夢美
シエラレオネ共和国とは?
シエラレオネ(Sierra Leone)共和国は、西アフリカの西部に位置する共和制国家で、イギリス連邦加盟国です。日本からの総距離は約12,000㎞、人口は約800万人と、アフリカ大陸の中では比較的小さな国です。1808年に奴隷制から解放された奴隷の移住地となり、その後のイギリスの植民地時代を経て、1961年4月27日に独立しました。
1991年~2002年まで11年間にも渡った内戦の影響により、2016年まで「世界で一番平均寿命が短い国」と言われていました。
- 人口:約814万人※1
- 面積:71,740㎢
- 独立:1961年4月27日(英国)
- 首都:フリータウン
- 公用語:英語(クリオ語)
- イスラム教:6割
- キリスト教:3割
- 土着宗教:1割
- 国民の43%が絶対的貧困化(1日$1.9以下の生活)※2
- 国民の92.7%が、1日$5,5以下の生活。※2
※1 WORLD BANK GROUP.2021
※2 WORLD BANK GROUP.2018
内戦の影響
ブラッドダイヤモンド血塗られたダイヤの奇跡
1991年から2002年までの約11年間、政府と革命統一戦線(RUF:Revolutionary United Front) との間でダイヤモンド鉱山の利権をめぐる複雑な紛争が勃発しました。当時、武器取引などに密輸・不正取引されたダイヤモンドは「血塗られたダイヤ」などと呼ばれ、後にシエラレオネは、この内戦を描いた映画『ブラッド・ダイヤモンド』の舞台となりました。
11年間の内戦で75,000人以上の市民が亡くなり、反政府軍の手により約1万人の子ども兵が徴収され、4,000人(諸説あり)以上が四股切断の犠牲者となりました。また、約450万人いた国民の半数以上が、難民となりました。
シエラレオネの教育の現状
義務教育完了率
シエラレオネは日本と同じ、小学校6年制・中学校3年制・高校3年制・大学4年制で、保護者の義務教育期間を中学校3年生までと定めています。中学校進学時には、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が共同で策定する中学進級試験:NPSE(National Primary School Examination)への合格が必須となっています。
2021年のAnnual School Censusによると、シエラレオネには保育園から高校まで全国12,168の学校があり、その半数以上(56%)がミッションスクール(宗教団体が伝道のために設立し、主に寄付金で運営が行われている学校)です。
小学校総就学率*1では女子が154%、 男子が149%とである一方で、完了率は95%となっています。また、中学校総就学率では女子が98%、男子が95%であり、中等教育(義務教育)過程の完了率は男女平均89%となっています。
小学校・中学校入学時点では女子の就学が多い傾向にあるものの、高校・大学進学につれ、男子の就学率が女子を上回る男女の教育格差がみられます。
その理由の一つに、女子学生の若年妊娠による休学・退学があり、中学2・3年生の女子学生妊娠が最も多く、その先の学校進学・就学完了率の低下に影響しているとされています。
SDGs目標4.1「2030年までに、すべての少女と少年が、適切で効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育・中等教育を修了できるようにする」の目標達成は未だ厳しい状況です。
*1 総就学率は、公式の就学年齢から外れた生徒が含まれる場合や、留年、復学によって、100%を超える場合があります。 総就学率の高さは、標準年齢に児童が所属するかどうかにかかわらず、就学度合いが高いことを意味します。
*2 Bureau of International Labor Affairs,2021より
*3 人間開発指数(HDI:Human Development Index)とは、各国を人間開発の4段階に順位付けするために用いられる平均余命、教育、識字及び所得指数の複合的な統計です。(UNDP,2021)
10代シングルマザー復学支援
2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日まで)
66名
54名
事業開始のきっかけ
シエラレオネ共和国では2015年、エボラ出血熱の流行拡大をきっかけに、前年比の50%増にも上る約8,000件の性被害件数が報告されました。それを受けシエラレオネ政府は「レイプと性暴力の非常事態宣言」を発令、また「妊娠した女子の復学禁止令」を発令しました。 国民の約9割がイスラム教徒であるシエラレオネでは、婚前の性交渉が認められておりません。「妊娠した女子の復学禁止令」により、若年妊娠への社会的スティグマは、一層深まりました。一方で、国際社会はこの禁止令を人権侵害とし、シエラレオネ政府に訴えたことで、5年間の施行を経て2020年にこの法令は撤廃されることになりました。
また、シエラレオネ共和国では現在でも、3人に1人が毎年、義務教育課程(中学校3年生まで)を完了できず、その大きな要因を締める「若年妊娠」に関して、政府は「SDGsすべての達成を困難にする脅威である」とし、若年妊娠防止キャンペーンや、性暴力防止キャンペーンなど、様々な政策を打ち出してきました。
私たちアラジは、2020年、「妊娠した女子の復学禁止令」撤廃後、すぐに、出産した女の子たちが学校に戻れるよう、受益者選定、復学と転校サポート、定額給付金制度をスタートし、現在までに66名が学校に復学、54名が継続してサポートを受けられるようになりました。
事業の概要
「10代のシングルマザー復学支援」は、若年妊娠によって初等・中等教育を中退している10代のシングルマザーが再び教育の機会を獲得し、経済的な自立や夢を実現できるよう 後押しすることを目的とした活動です。
避妊具の入手困難さ、性教育の不足、性暴力などにより望まない妊娠をし、そして、人工妊娠中絶の禁止により子どもを産み・育てる責任を負い、その結果教育を受ける機会を失う、 さらにパートナーが経済的責任を果たさない、そんな10代のシングルマザーの女の子が、再び学校で学べるよう、様々な活動を実施しています。
(1)支援プログラム概要について
- プログラム実施人数:66名(うち54名がサポートを継続)
- 受益者平均年齢:17歳 ※約5割の受益者が最終学歴中学校2年生で、16歳で妊娠を経験する子どもが最も多い
- 3か月間の奨学金支給額:約3,500円(返済不要)
- 進学支援金制度利用:18名 ※進学支援金制度とは、受益者が中学校受験(NPSE)に合格し中学校に進級する場合、約3,300円を給付できる制度です。
(2)支援条件と契約
女の子が当法人との支援契約に至るまでには、女の子と赤ちゃん、そして赤ちゃんの養育者に課する様々な条件があります。70以上の候補者へのヒアリング項目と、 19の絶対条件に基づいて支援対象者を決定しています。サポートを実施する女の子の条件(19項目を一部抜粋)
- 赤ちゃんの父親と同居しておらず、父親による経済的責任が果たされていないこと
- 最終学歴が中学校2年生までの10代のシングルマザーであり、子どもが一人であること
- 女の子と赤ちゃんの関係が良好であること
- 赤ちゃんが生後7か月以上で、授乳が1日に3回以下になっていること
- 家族が復学に協力的で、赤ちゃんのお世話をできる家族がいること
(3)復学登録、モニタリング、現金給付について
女の子への最初のヒアリングとモニタリングは、原則1名の女性スタッフが行っています。
また、64%の候補者の女の子が、元いた学校での、いじめや陰口を懸念し新しい学校への転入を希望しています。その場合、スタッフが学校関係者との連携を取り、復学登録を行います。
プログラムの契約は1月1日~6月30日と7月1日~12月31日の2度の更新手続きがあり、更新する1か月前までの毎月のモニタリングによって、今後のサポートの有無を決定していきます。契約は、女の子が通学している間に赤ちゃんのお世話をする家族1名も同時に行います。
年に4度のモニタリングでは、女の子の世帯の経済状況、給付金の使途、赤ちゃんの健康状態、学校でのいじめや陰口がないか等、約50の質問項目によって詳細に経過を観察していきます。
モニタリングと現金給付の実施月
- 第1回給付:11月‐12月
- 第2回給付:2月‐3月
- 第3回給付:5月‐6月
- 第4回給付:8月‐9月
このように現地スタッフが、10代のシングルマザーとその家族へ綿密に定期的なモニタリングを実施し、支援契約・契約更新を行っています。
支援継続不可の女の子について
これまでに、12名の女の子がサポート対象になっているものの、給付金の支給ができず、サポートが届けられない状況が続いております。
12名中、5名が給付金受取日に、病気などの理由で、事務局まで来られないと回答しております。今後は、電子マネーを活用した給付金のサポートをより一層強化してまいります。
支援対象者の給付金使途を調査した結果、以下のような傾向がみられました。
給付金の使用先として、赤ちゃんのミルク代やオムツ代など養育費への支払いが最も多く、1か月の給付金使途のうち約40%を占めることがわかっています。
次いで女の子と赤ちゃんの医療費(約15%)に給付金が使用されています。
また、新学期が始まる前の7月には靴・バッグ・制服などの学用品の割合が多く、8月の夏休み期間には夏期講習費の支払いが多くなることがわかっています。
事業の成果
(1)経済状況の改善
3か月間の奨学金支給額:約3,500円(返済不要)を給付しています。給付金の使用用途は、女の子の教育費と赤ちゃんの養育費に限定され、返済の必要は原則ありません。初月にはバッグ・制服・文房具代・給食費といった学用品等の復学準備金、給付3か月後からは赤ちゃんの養育費と放課後学習(有料)に主に利用される傾向にあります。
(2)心理的変化
NVC(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)を活用した、心理的変化の測定を行っています。感情リスト、ニーズリストを基に、女の子一人一人の本当のニーズをヒアリングしていきます。支援開始時に「食べ物」や「安全」をニーズにしていた彼女たちが、支援から約3カ月後に、「承認」や「成績」をニーズと回答しています。
1人1人に寄り添い、現金給付と復学のサポートを提供することにより、ベーシックニーズが満たされていることが確認されています。
(3)社会変容
シングルマザーの女の子の復学支援に努めるとともに、同意のない性交渉による望まない妊娠の根本的解決のために、中学校・高校での男子生徒へ向けた性教育プログラム「ハズバンドスクール」を、女の子が復学するすべての学校で、実施しました。
性教育プログラムの参加者である男子中高生30人へ、実施前と実施後にアンケート調査を行いました。
実施前のアンケートでは、「10代のシングルマザーの復学に反対」と答える男子中高生は56%だったのに対し、ハズバンドスクール実施後は0%の回答となり、「女性が教育を受け続けることが、シエラレオネの未来に繋がる」とする回答や「自分が女性の立場だったら勉強を続けたいから」とする回答が見られ、社会の変容に寄与しています。
協賛のご協力
2022年2月に、株式会社マイコエンタープライズ Kipekee様より、布ナプキンの、布と製作費のご提供をいただきました。サポートを届ける10代のシングルマザー全員に配布することができました。
貧困世帯では、1枚約80円の生理用ナプキンを購入することが難しく、ボロ切れをあてたり、生理の際に学校に行かない、という選択をする女の子もいます。そのため、今回は、洗って繰り返し使用できる布ナプキンの提供を実施しました。
Kipekee様のご支援、誠にありがとうございました。
男子中高生性教育プログラム
2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日まで)
62校
20,436名
事業開始のきっかけ
若年妊娠により女子が教育を受け続けることが困難になる大きな社会課題の根本解決のため、女性差別的慣習の残るシエラレオネにおいて、男性側の意識や行動を変容する機会として、「男子中高生への性教育プログラム」の実施が、2021年2月よりスタートしました。
以前より、Gloval Village Networkの代表であるPidia Josephが、村での男性への性教育を実施し、各国メディアに取り上げられていたところ、アラジが協働のリクエストをし、パートナー団体としての活動がはじまりました。最終的にはPidiaがアラジのスタッフとして加わり、加えて、一般社団法人アフリカ協会の「みずほ銀行公益信託」に採択されたことで、事業が拡大しました。
事業の概要
若年妊娠による教育格差の是正や、女性の権利が尊重されにくい社会の変容を目指し、問題解決に向け「男性側が正しく性知識を持ち避妊について理解すること」「男性側において女性の尊厳(権利・健康・教育)を守る意識を高めること」を重点課題として、シエラレオネ共和国における男子中高生への性教育に関するテキストの配布、各学校に啓発フライヤーの掲載及びハズバンドスクールの開催を行いました。
また、月に1度、ラジオ局での啓発活動も実施しました。
プロジェクト開始前に、ケネマ県教育省の幹部とのミーティングを設け、「10代の妊娠・出産と学校での性的暴力」という社会に蔓延している非常に深刻な問題を解決するプロジェクトであることを認めていただき、ケネマ県のすべての学校リストを提供していただきました。
事業の成果
これまでに実施してきたハズバンドスクールを通じて、中高生男子の知識、意識レベルに変化が生まれました。30名の中高生への事前・事後アンケートの結果によると、「セックスの際に避妊具を使用するべきか?」という質問に対し、「するべき」という回答が0%だったのに対し、事後アンケートでは、100%に増加しました。また避妊の際には、「Depo(3カ月に1回接種する避妊注射)ではなく、性感染症を防ぐことのできるコンドームを選択する」という声が見られました。
また「妊娠した女子が学校に戻るべきかどうか」というアンケートに対しては、「女子にも教育を受ける権利があり、国の発展につながる」、「女子の気持ちになって考えてみると、自分も勉強を続けたいと思ったから」とする回答が、8割増加しました。
また、2022年度は女子中高生へも性教育プログラムの事前・事後アンケートを実施し、女子中高生への性教育プログラムの実施も重要であると認識しました。
現場の声
学校の先生方
校長先生をはじめ、先生方はハズバンドスクールの内容が、授業で使用する教材にふさわしい内容であると評価していただき、先生方の関心も非常に高く、全面的に協力していただきました。具体的には、すべての学校において、参加者の選定と出席者リストの管理を行うプロジェクトに教員を適切に配置してくださいました。
また、ハズバンドスクールの教科書において、2019年に法改正したばかりの「性加害者には高額な罰金と懲役刑が科せられる」法律について触れていることから、少年たちの不道徳な振る舞いがわずかに改善したと報告されています。
警察Family Support Unit
性犯罪、不法性交、性加害を受けた若年女性の保護を担当する警察のFamily Support Unitは、ビオ大統領夫人によって2019年12月より実施された、「妊娠中の女子生徒も学校に復学可能」とする「Hands off Our Girls Project」と共にハズバンドスクールが実施されたため、若年妊娠しても復学する女子が、若干増加しているとみています。
都市部 奨学金給付支援
2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日まで)
14家庭
18名
事業開始のきっかけ
2017年8月雨季のピークの時期に、首都フリータウンのリージェント通りにおいて、大規模な土砂災害が発生しました。山肌に安価な家を建て、さらに森林伐採などで地盤が緩くなっていたことから、この地すべりによる土砂災害は、「人災」であったともいわれ、1,000名以上の住民が亡くなりました。
災害で、災害孤児となり、親戚宅に引き取られた約15名の子どもの家庭に対する毎月の現金給付のサポートを現地パートナーFC King Kongと共にはじめたことがきっかけで、現在でも親戚宅に引き取られる里子や、片親家庭の子どもを対象とした、現金給付のサポートを実施しています。
事業の概要
首都フリータウンと、ケネマ県において、災害・不慮の事故・病気・失業などを原因とする保護者の金銭的貧困を理由に、義務教育(小学校1年生〜中学校3年生まで)を完了することの困難な、片親家庭・里親家庭の子どもたちに対して、3か月に一度、定額の奨学金給付支援を行っています。
給付金は、保護者によって子どもの生活費・教育費・医療費すべてに使用されます。
また、3か月に一度、事務局でのモニタリングにて、成績表、家庭の経済環境をチェックしています。
事業の成果
これまで、すべての子どもがサポート期間中に、留年・退学することなく学校へ復学することができています。
≪ケネマ県≫
5家庭-5名
≪首都フリータウン≫
9家庭-18名
計14家庭/18名
3か月間の奨学金支給額:約3,500円(返済不要)
サポーターの皆さまとの交流
奨学金給付支援では、日本のサポーターとの皆さまとの交流機会を設け、相互の異文化交流の場 を提供しました。
奨学金給付支援事業の子ども達と、1対1で交流ができる支援制度が、ドリームサポーター制度です。
月額3,000円のご支援で、年に1度、特定の1名の子どもとお手紙のやりとりができます。また、3カ月に一度、特定の1名の子どもの成長過程を写真で見守ることができます。
2022年度は、32名の方にドリームサポーターを継続していただきました。皆さまのご支援、誠にありがとうございます。
2023年2月のサポーター限定交流会では、シエラレオネに出張中の代表下里による、サポーター限定の子ども達とのオンライン交流会を開催しました。自分たちの夢や好きな学校の教科について聞かれると、「将来、看護師になりたい」「好きな教科は歴史」等さまざまに、日本のサポーターさんからの質問に答えていました。
子ども達が逆境を乗り越え、元気に学ぶ姿に、勇気づけられたというサポーターさんからの声もいただきました。
農村部 小学校支援
2022年度(2022年4月1日~2023年3月31日まで)
2校
364名
事業開始のきっかけ
アラジが現地事業をスタートした2018年より、現地パートナー団体Pickin to Pickinの紹介を受け、ポートロコ県3校での小学校支援事業がスタートしました。
2020年のAnnual School Censusによると、シエラレオネ共和国の全国の小学校では、4,592の教室で子ども達が初等教育を完了するための、教室・椅子・机・黒板・教材・給食・トイレ・手洗い場などが未整備です。
特に農村地域では、子どもたちが安心して学ぶことのできる環境がまだまだ整っていません。
私たちは2019年まで、ポートロコ県の3つの小学校に、教科書やノートなどの教材物資の提供を実施し、2020年度からは、定期的な学校の初期設備や給食費、先生のお給料などを補助しする、定額給付支援に切り替え、活動を継続して実施してきました。
事業の概要(マケレ小学校)
小学校定額給付支援では、農村部ポートロコ県マケレ小学校の学校運営者(教職員8名)に対して、8月と12月を除く、毎月約50,000円(6,500NLe)の定額現金給付を行っています。
しかし、学校に通う子どもたちが適切な教育機会を継続的に獲得できるよう、現物を与える支援ではなく、より自立した学校運営を学校運営者自らが行うことを目指して、2020年11月より、毎月の現金の定額給付という形でサポートを実施しています。
また、マケレ小学校は、2020年に、近隣小学校の校舎の老朽化と先生の不祥事による閉鎖により、前年284名だった児童数が、361名に急増しており、2022年度の児童数は364名でした。
サポートの際の学校との合意事項
- NPO法人アラジの現地スタッフによる、月に1度の学校訪問における、経費支出会計報告と子どもたちのインタビューなどの経過観察に応じること。
- FGM(女性器切除)を伴う通過儀礼に関して、子ども自身に参加是非の選択権があることや、女性器切除の精神的・肉体的リスクについて、学校教育に含めること。
- 子どもへの体罰を行わないこと、学校の登校日には、毎日人数分の給食を家庭の経済状況による差別をせず、全員に提供すること。
- 支援事業は、ポートロコ県管轄の教育省へ将来的には引き継がれること
以上を目指し、政府公立小学校として認可されるまでの初期設備および給食費・教員給与等の補助的なサポートとすることなどを定め、活動を実施してきました。
給付金の使用用途
毎月の給付金は約8割が給食費に使用され、その他には、在籍する子どもたちへの教材・机・椅子・黒板・トイレ・水道などの学校設備費や修理費のための貯蓄金、教員給与などに使用されます。
また、積水ハウスマッチングプログラム様より、30万円のご助成を受け、子ども達全員分の8月を除く毎月20日分の給食の提供を実施することができました。
事業の成果
2021年10月に3棟のトイレ建設を実施し、安全面・衛生面においても大きく寄与しました。また、もともと設置されたいた2つの教室に、長椅子24脚、黒板6枚、飲料水用バケツ2個を設置、床の整備、加えて2022年度には防犯ドアの設置と、校舎壁の塗装を行いました。
皆さまのご支援で子どもたちの継続的な学びが実現し、3名が中学校試験(NPSE)に合格することができました。
今後は、積水ハウス様からの2023年度の給食費支援を最後に、政府主導の学校運営と引き継ぐ形で調整を実施し、事業終了とする予定です。
学校建設プロジェクト
日本寄付財団 Maaaruプロジェクト様のご助成を受け、ケネマ県ウィラー小学校学校建設プロジェクトが2023年3月よりスタートしました。
ウィラー村は、2019年のコロナ感染症感染防止支援で、我々が最も経済的に脆弱な農村エリアに指定し、たびたび感染防止物資の提供や、食料支援を実施しておりました。
ウィラー村には小学校がなく、100名ほどの村の子ども達が未就学です。2023年8月頃までの3クラスの学校建設を目指し、教育省担当者に、教員免許を持つ先生の手配や、学校給食の手配等の調整を実施していきます。
チャイルドセーフガーディングポリシー
2021年9月16日に、理事会の承認を経て「チャイルドセーフガーディングポリシー」を制定いたしました。
当団体の受益者である子ども(18歳未満のすべての人)特有の弱い立場に留意し、子どもへの特別な保護要件を強調するとともに、あらゆる性的搾取・虐待・その他の形態の暴力や危害の防止の重要性を明記しています。
スタッフ、ボランティア、インターン、パートナー機関、寄付者、メディア関係者など、当団体すべての関係者に適用されます。子どもの個人情報と尊厳を守るため、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
支援者の皆様との共通認識
✔ 支援を届ける子どもを選定する際の最初のヒアリング及び毎月の経過観察(モニタリング)は、可能な限り子どもと同性の各事業地の現地スタッフが行います。
✔ 広報活動で使用する子どもの写真、子どもの支援にいたるまでのストーリー、支援事業名は、保護者または支援先の学校の責任者が書面で許可する場合に限り使用されます。
✔ 子どものフルネーム、居住地域・年齢・学校の正式名称・校章つきの制服や運動着の写真・村やコミュニティの名前や学校名が分かる看板の写真・その他、地域や個人が特定できる情報等は、公開することはできません。
皆さまのご協力、どうぞよろしくお願いいたします。
啓発活動の実績
合計834名へ活動報告・イベントを実施
(1)活動報告会の開催
オンラインにて5度開催し、延べ71名がご参加くださいました。
(2)交流会・サポーター勉強会の開催
対面・オンラインにて5度開催し、延べ86名がご参加くださいました。サポーター限定勉強会ではNPO法人IGPC様とご一緒させていただきました。
(3)他団体とのコラボオンラインイベントの開催
オンラインにて4度開催し、株式会社VAIABLE様、JVC日本国際ボランティアセンター様、NPO法人HIKIDASHI様方とご一緒させていただきました。延べ100名がご参加くださいました。
(4)学校や企業での講演会
JANICワーキンググループ様、みんなのさいわい様、READYFOR様、山梨高校様、株式会社Weblio様、都立大山高等学校様、コングラント株式会社様、千葉市教育委員会国際教育部会様で、代表下里が登壇させていただきました。延べ567名がご参加くださいました。
メディア掲載の実績
2022年6月:雑誌”Neighbor”掲載
2022年8月:Canvaインタビュー掲載
「Canvaで年次報告書を10倍速で作成!スタッフ全員が画像編集できるように」
2022年9月:READYFORインタビュー掲載
「寄付者ではなく仲間」NPO法人アラジの活動を継続寄付で支えるマンスリーサポーターの存在意義」
2022年9月:mySDGインタビュー掲載
「シエラレオネの貧困問題を根本から解決したい」〜すべての子どもに教育を届ける〜」
2022年10月:~JK RADIO~TOKYO UNITED 出演
「シエラレオネ共和国で教育支援をおこなう【NPO法人アラジ】に注目」
その他の活動実績
Panasonic NPO/NGOサポートファンドfor SDGs 採択
Panasonic NPO/NGOサポートファンドfor SDGsの組織基盤強化助成(200万円)に採択されることができました。採択の際には、代表の下里が、Panasonicセンターにて、「助成通知書」の贈呈式に参加いたしました。
寄付月間賛同パートナー賞 受賞
毎月12月に実施される、寄付月間2022において、賛同パートナー賞を受賞いたしました。
グッドガバナンスチェック 認証付与
JCNE(日本非営利組織評価センター)のグッドガバナンスチェックにおいて、すべての基準を満たしているとして、グッドガバナンスチェック認証マークを付与されました。
アフリカ布雑貨 販売事業
シエラレオネ産布「Gara」の魅力と新商品の製作
私たちは、首都のフリータウンで、火事で家を失った15名のテーラーと商品開発・日本での販売事業を通して、生活向上を目指すプロジェクトを2017年〜2020年まで実施していました。
現在は、対等なビジネスパートナーとしてシエラレオネの製品を日本で販売し、シエラレオネの魅力を日本に発信することで、日本の支援者やお客様とシエラレオネをより深く繋げる機会とするために、継続して商品制作を行っています。
シエラレオネでは、テーラー「イブラヒム」がお洋服の製作を行い、日本ではボランティアの皆さまが、洋服を製作する際にあまったハギレ布をアップサイクルし、巾着やピアス等の雑貨の製作を行いました。
2022年度には、アラジのWebショップにシエラレオネ産の布「Gara」商品が多数入荷しました!
Gara(ガラ)とは、タイダイ絞り染めと、ブロックスタンプの技法で作られた、シエラレオネ産の布のことです。通常のアフリカ布より、柔らかみや光沢があり、すべすべとした質感で、高級感があります。ぜひお手に取ってシエラレオネを身近に感じてみてください。
インターン参加の実績
2022年度は16名のインターン生が参加しました!
2022年度は、日本事務局にて16名の学生インターン生が活動に参加しました。
3カ月間のインターンシッププログラムでは、対面またはオンラインで、国際協力やNPOについて幅広い業務を経験します。
これまで、インターン経験者のうち5名が非常勤有給スタッフになりました。
インターン生インタビュー
西村 郁哉さん
国際交流だけにとどまらず、もっと社会問題の解決に直接関わる国際協力に携わりたいと考えアラジのインターンに参加しました!NPO全体の運営に直接係る業務や、サポーターの方々との交流の場である国際協力勉強会の準備など、裏方から最前線まで多岐にわたるインターン活動でした。
鈴木 知世さん
受益者と月額支援者の管理や、アフリカ布雑貨製作・梱包、外部の講演会登壇などを行いました!現地マネジメント業務を通じ、数字の大きさやデータだけでは測れない、受益者一人ひとりの人生や暮らしぶり、家族といった周囲との関係性も重要であることを改めて実感しました。
魏 思雨さん
リターン品製作や現地スタッフとのやり取り、募金キャンペーンの実行、SNS広報などの業務を行いました!西アフリカには「極貧」というざっくりとした印象しかなかったのですが、インターンを通じて、シエラレオネへの理解がかなり深まりました。
インターン生募集
アラジでは、3カ月間オンラインまたは対面(新宿事務局)で、インターンとして参加してくださる、学生・シニアの皆さまを募集しております。まずは下記ページより詳細をご覧ください。
会計報告
活動計算書
収入割合
※マンスリーサポーター月額寄付額平均:約1,280円
※受取単発寄付件数:102件(募金箱は集計時1回と計測)
※募金箱寄付金:22,361円(設置協力:6店舗合計)
7か年 収入推移
※各年度の詳しい貸借対照表・活動計算書・活動計算書の注記・財産目録はこちらのページ
をご覧ください。
監査報告
※「監査報告書」原本は、事務局にて大切に保管しております。
※代表理事の下里夢美(支倉夢美)は、日本では旧姓で活動しております。
市民の皆さまのご参加
ボランティア参加とサポーター登録の推移
私たちアラジは、世界の子どもの教育課題を解決するため、参加の窓を次々に開けはじめました。
参加の窓を開けると、思いがけずたくさんの方が、「発信」や「寄付」や「ボランティア参加」や「講演依頼」で、お力寄せくださいました。
思い返すとアラジは、皆さまの繋がりの力で、シエラレオネの子ども達延べ、2,000名への教育支援を実現してきました。
今、世界の未来を変えるのは、一人ひとりの繋がりの積み重ねだと改めて確信しています。今後もアラジは、人と人との繋がりを強化し、市民の皆さまと一緒に課題を解決していきます。
ボランティアの皆さまからのメッセージ
自分も楽しみ
社会貢献もできる
一石二鳥なボランティア活動
「今年は人との交流を楽しみたい」と思い、ボランティア募集サイトで「新宿 子ども ボランティア」というワードで検索したのがアラジとの出会いでした。
普段は幼児に関わる仕事をしておりますが、アラジでのボランティア活動では、普段出会えない高い向上心を持った高校生、大学生や様々な業種の方々と色んなお話ができ、大変貴重な経験をさせていただいております。
「自分も楽しみ、社会貢献もできる」アラジのボランティア活動はまさに一石二鳥な活動だと思います。
今、自分がいる
日常を見つめ直す
きっかけになりました。
今、自分がいる日常を見つめ直すきっかけになりました。
ボランティア活動を通じて、異なるバックグラウンドや価値観を持つ人々と協力し、困難な状況にある人々や地域に対して、支援のお手伝いをすることで、とても貴重な体験をさせていただいただき私自身の成長にも繋がっています。
普段、私達が暮らしの中で普通にしていた事も住む場所が違うだけで当たり前ではないことが再確認でき自分に取って大事なことは何か考えさせられるきっかけになりました。
またボランティアを通じてとても素晴らしい人たちに出会えるのもAlaziならではかと思います。
気軽に参加でき、
自分の手でサポート活動が
出来るボランティア!
本業はキャラクターグッズの流通業界で、営業アシスタントをしてます。何か直接的な支援活動に携わるボランティアはないかと探していたところ、アラジさんのシエラレオネへの支援活動を知り、月に数回、主に事務局にてリターン品製作などの手伝いをしています。事務局で一緒に作業されるボランティアの方々や、イベントなどを通して色々な方とも交流を深められるところが良いと思ってます。また空いた時間に気軽に参加できるのも魅力だと感じてます。
マンスリーサポーターを募集しています!
私たちアラジは、2014年に任意団体として創設、2017年にNPO法人化してから約9年間で、述べ2,004名の最貧困家庭の子どもたちに、公教育への復学機会を提供してきました。
2023年4月にNPO法人として7期目を迎えた私たちは、引き続き、子ども時代の教育格差を是正するべく、「誰もが夢に向かって努力できる社会の実現」をビジョンに、現地シエラレオネの人々の尊厳を守りながら真摯に活動を続けてまいります。
あと250人で達成!
サポーター特典
マンスリーサポーターの皆さまからのメッセージ
学べて成長できて
社会にも貢献できる
私もソーシャルセクターに従事する立場として、アラジさんの活動を応援すると共に、取り組みを学ばせて頂いております。国際協力NGOとしての活動が素晴らしいのはもちろんのこと、日本の、世界のソーシャルセクター全体の発展にも貢献されていて、下里さん中心にアラジのみなさんを尊敬しています。関わることで学べて、成長できて、社会に貢献することができる、素晴らしい団体だと思います。
コーヒー1杯分で
シエラレオネの社会を変える
お手伝いができます。
私も性教育に携わる身として、「男子中高生への性教育で社会を変える」ために活動しておられるアラジさんの理念に心から共感し、マンスリーサポーターに登録させていただきました。毎月コーヒー1杯分のほっこりとした気持ちで応援させてもらっています!これからも頑張ってください!!
自分でもできる
支援の方法
私は日本の子どもたちに向けたNPO活動をしていますが、シエラレオネの子どもたちもひとりひとりの命の重さ・可能性・存在価値は同じです。しかし、現地に行くことは現実的にはちょっと難しいし、そもそも私には言葉が話せない不安が・・・。
でも、現地の子どもたちをサポートしてくれているアラジをサポートすることはできます。私でもできる方法をわかりやすく、ハードルを下げた形で提示してくださっていることに、アラジの本気度と愛を感じます。小さな支援ではありますが、これからも応援させていただきます!
NPO法人アラジ 概要
法人名 | 特定非営利活動法人Alazi Dream Project |
英語名 | Alazi Dream Project Japan |
略称 | NPO法人アラジ |
略称(英語名) | ADP Japan |
現地法人名 |
JaSiLe Foundation ※特定非営利活動法人Alazi Dream Projectはシエラレオネ現地法人JaSiLe Foundationを組織し、シエラレオネでの事業は現地法人と共同で実施しています。日本法人と現地法人は、それぞれの国の法律に従って政府に登録され、それぞれが法人格をもっています。(Director: Yumemi Hasekura) |
代表理事 | 下里 夢美 |
役員 | 下里 夢美 (代表理事) 支倉 常明 (副理事) 小林 ゆりな (理事) 鈴木 香緒理 (理事) 尾郷 由紀子 (理事) 嶋 博史 (理事) 塚本 隆明 (理事) 成岡 由枝 (理事) 新荘 直明 (理事) 渡邊 裕樹 (理事) 髙村 忠良 (監事) |
事務局長 | 支倉 常明 |
創設 | 2014年3月7日 |
設立 | 2017年7月7日 |
事業 |
(1)イベント事業 (2)開発教育に関する事業 (3)地域や学校での講演会や見学会の開催による国際教育事業 (4)シエラレオネ共和国における就学支援事業 (5)シエラレオネ共和国における就労支援事業 (6)災害その他の緊急事態に対する救援、復興協力および防災事業 (7)西アフリカの雑貨販売事業 |
事務局(日本) |
〒162-0041 TEL:070-8908-8450 |
事務局(首都フリータウン) | Freetown, Sierra Leone |
事務局(ケネマ県) | Kenema city, Sierra Leone |
定款 | |
参加ネットワーク | 国際協力NGOセンター(JANIC) 団体正会員 |
2022年 事務局スタッフ
2023年 新事務局スタッフ
ご協力企業・団体 様
ご助成企業・団体 様