中高生包括的性教育プログラム

 O U R  A C T I V I T Y 

 

若 年 妊 娠 の 根 本 的 解 決 に 向 け て

 

 

NPO法人アラジでは、これまで述べ2,000名以上の最貧困家庭の子どもたちに、公教育への復学機会を提供してきました

一方、シエラレオネ共和国ケネマ県では、約17%の10代の女の子が予期せぬ若年妊娠にいたり、その後シングルマザーになることで、初等・中等教育を退学しています。10代で妊娠してしまうことが、教育を受け続ける上で大きな阻害要因となり、さらには教育機会の男女格差にも繋がっているため、2021年3月からは、10代のシングルマザーへの復学支援も実施しています。

 

「ハズバンドスクール」は、そのような問題の根本解決を目指し、2021年11月からケネマ県の現地NGO 「Global Village Network」と協働して行っている、地域の約8割の中学校・高校の男子生徒へ向けた性教育プログラムです。

現在は、「中高生包括的性教育プログラム」に名称を変更し、2022年7月より女子生徒への性教育プログラムの提供も実施しております。

 


 


 

 B A C K G R O U N D 

 

性 教 育 を 取 巻 く 背 景 と 課 題

シエラレオネにおいて10代の女の子が妊娠にいたるまでには、主に4つの理由があります。

1.レ イ プ な ど の 性 暴 力

シエラレオネの10代の女の子の約5.6%が、同意のない性交渉を経験したことがあると答えています。シエラレオネの伝統文化の多くは女性差別的で、女性が男性に同意をとることは容易ではありません。

2.避 妊 具 へ の ア ク セ ス の 難 し さ

貧困家庭において、避妊具であるコンドーム(1つ30円~100円程度)を購入することは非常に困難です。(農村部の世帯月収は平均月5,000円程度)

3.性 教 育 が 提 供 さ れ て い な い

教育現場で充分な性教育がなされていません。シエラレオネのほとんどの学校には保健室がなく、また教員免許をもつ先生は全体の75%、女性教員は男性教員の5分の1程度しかおらず、同意のない性交渉を経験した女の子のうち6.4%が、男性教員からの性被害にあったと報告されています。

4.家 庭 で の 性 教 育 が タ ブ ー

文化的・宗教的背景から、未婚女性の性行為はタブーとされ、男女の性や性行為の話を家庭内ですることはありません。

このような問題がある中で、男性側が避妊に理解を示さず、子育ての責任を取らず、女性だけがスティグマとされる社会を変えていくために、問題の根本解決を目指し、ケネマ県全体での「出張型の包括的性教育プログラム」の実施を進めてまいります。

 

 PROGRAM 

 

オリジナルテキストを用いた性教育プログラム

 

 

オリジナルテキストは、シエラレオネ地域特有の課題・価値観・認識等に十分留意し、シエラレオネ国内の法律・規則・政策等に沿って制作されています。

下記の項目について理解を深め、コンドームの正しい装着方法もレクチャーします。

  • 女性の権利・教育の重要性
  • 生理や出産などのリプロダクティブヘルス
  • 性加害を起こした場合や示談した場合の刑罰
  • 女性が被害者となった場合の適切な連絡機関と電話番号
  • 女性が被害者となった場合の治療・アフターケア・刑事訴訟のサイクル
  • 性的同意の10パターン

 

性教育スピーチコンテスト

私たちアラジが各学校で提供する性教育は、約2時間のセッションです。一過性の性教育の提供にとどまらず、全国的な啓発の一環として、性教育を受けた生徒10名が「性的同意」や「避妊」「リプロダクティブヘルス・ライツ(性と生殖に関する権利)をテーマにスピーチを競う、「性教育スピーチコンテスト」の実施がスタートしました。

第1回のパイロット版では、ケネマ県のとある高校にて、男女各5名の生徒がスピーカーとして選ばれ、選ばれた生徒たちは3分という持ち時間のなかで、堂々とマイクを持ち自身の考えを発表しました。

当日の会場には現地・日本メディアもかけつけ、盛り上がりを見せました。コンテストの様子は、ラジオ局や国営テレビ局でも放送されます。

審査員には、ケネマ県の教育省の職員や、警察署のFamily Support Unit(性加害を受けた被害者の対応部署)の職員、校長先生などが選ばれ、公平に審査を行います。

1位のスピーカー発表の瞬間、優勝した女子生徒からは、涙ぐむ様子がみられました。生徒たちにとって一生の思い出に残る機会であるとともに、全国的な啓発の場としても期待される性教育スピーチコンテストを、性教育と共に今後も拡大していく予定です。

M E S S A G E 

 

現地スタッフからのメッセージ

専 任 現 地 ス タ ッ フ

ファティマタ・ジャジテイ

包括的性教育の提供は、予期せぬ妊娠を防ぐだけではなく、10代の中高生が適切に身を守ることにも繋がります。

性教育は単なる性知識を与えるだけではなく、パートナーとよりよい関係を築くためのモラル教育でもあります。

こうして、多くの学校で出張型の性教育を実施できることは、支えてくださる、ご助成元と、寄付者の皆様のおかげです。皆様に感謝申し上げます。