10代のシングルマザー復学支援

 O U R  A C T I V I T Y 

 

1 0 代 の シ ン グ ル マ ザ ー 復 学 支 援

NPO法人アラジは、シエラレオネ共和国ケネマ県(人口約60万人)において、10代でシングルマザーになった女の子たちが、再び学校で学べるよう、3ヶ月に1度(約5,000円)の奨学金給付支援を行っています。

「女の子が妊娠したら、勉強を続けてはならない」

妊娠した女子の復学禁止という、大きな人権侵害でもある禁止令が2020年まで試行されていました。

手に入らない避妊具や、性教育の不足、性暴力などにより、約1.7割の10代の女の子が、若年妊娠・出産の末に、初等・中等教育を退学しています。

SDGs「4.1」が目標として掲げる「義務教育完了」の機会や、その後の夢への進路を失っており、シエラレオネにおける男女の教育格差は大きな社会問題になっています。

2023年度は、約70名のシングルマザーの女の子に、復学機会の提供を目指し活動しています。


 N E W S 

最 新 活 動 報 告

 B A C K G R O U N D 

若 年 妊 娠 を 取 巻 く 背 景 と 課 題

1.性 教 育 の 不 足

シエラレオネでは、文化的・宗教的背景から、未婚女性の性行為はタブーとされ、男女の性や性行為の話を家庭内ですることがありません。

また、多くの学校には保健室がなく、18歳未満同士の性交渉が処罰の対象になる法律もあることから、教育現場で充分な性教育がなされていません。

加えて、貧困家庭において、避妊具であるコンドーム(1つ30円~100円程度)やDepo(3か月に一度接種する避妊注射)を購入することは非常に困難です。(農村部の世帯月収は平均月5,000円程度)

2.復 学 禁 止 令

2015年のエボラ禍において若年妊娠が50%増加したことを背景に、政府は「妊娠した女の子は、勉強を続けてはならない」とする禁止令を施行しました。国際社会からのバッシングを受け、2020年にこの禁止令は撤廃されましたが、女の子のみを悪とする禁止令により、「若年妊娠をすることは、恥ずかしく愚かなこと」という負のイメージがより一層社会に浸透することとなりました。

禁止令が撤廃されたあとも、学校や地域でのいじめや陰口など、社会的スティグマと女の子たちは戦っています。

3.性 暴 力 と 精 神 疾 患

9割の女の子が妊娠したことを後悔し、鬱・自殺・自傷行為など、精神面で困難を抱えてしまうケースが多く、家庭内暴力や地域・学校での性暴力など、複合的な問題とも大きく関連しています。

また教員免許をもつ先生は全体の75%、女性教員は男性教員の5分の1程度しかおらず、女子への性教育の場が非常に限らると同時に、同意のない性交渉を経験した女の子のうち6.4%が、男性教員からの性被害にあったと報告されています。

4.高 い 子 ど も の 死 亡 率 

シエラレオネの平均寿命は54.6歳です。(世界銀行,2019)
平均寿命を下げる主な要因は、高い死産率、乳幼児死亡率、妊産婦死亡率などの「子どもの死」です。

また、10代の女の子の死亡原因の第1位は「出産」です。10代の母親は、出産時に死亡する可能性が40〜60%高いと推定されています。

10代の女の子が出産と子育てに挑む時、その子どもが5歳の誕生日を迎えられる確率は大幅に下がります。

5.中 絶 の 禁 止 

シエラレオネでは、1861年の旧法より中絶が合法化されていません。性加害を受けた場合であっても、「人口妊娠中絶」を選択できません。女性たちは中絶をするために、大量の抗生剤やお酒を摂取したり、膣内にハーブを入れたりと、時には死に至るほどの危険な方法で、中絶を試みます。

シエラレオネの妊産婦死亡率は極めて高く、10万人の出生ごとに1,120人(世界銀行,2019)の女性が亡くなっています。そのほとんどは出産時の大量出血によるものですが、妊産婦のうち約10%が、安全ではない中絶によって死亡しています。

 PROGRAM 

3 ヶ 月 に 1 度 の 現 金 給 付 で 復 学 と 子 育 て を サ ポ ー ト

貧困により、10代で出産を経験した女の子は、経済的にも心理的にも自力での復学が困難になります。

多くの女の子は、家から出ずに隠れて育児をしたり、教育を受けられないことから、村の中で一生を過ごすことになります。また、月2,000円程度を稼ぐために、1日中、物売りや畑仕事等の児童労働に従事します。

私たちは、10代のシングルマザーに対して、毎月、電子マネー送金(Afrimoney)を用いた、毎月約2,000円の現金給付を行っています。

赤ちゃんの父親が経済的な責任を果たしておらず、養育費を捻出するために児童労働をせざるを得ない、初等・中等教育を完了することが困難な女の子がサポート対象です。

毎月の電話での経過観察、3ヶ月1度、子どもたちの健康状態や成績表、家庭環境等をチェックしています。

1.地 域 へ の 家 庭 訪 問

アラジの現地スタッフが地域コミュニティで行われる会合に参加し、支援条件とマッチングする10代のシングルマザーの情報を得ます。

まずはじめに、現地スタッフによる家庭訪問を行います。

2. ヒ ア リ ン グ 調 査 と 支 援 契 約

アラジの現地事務局にて、女性現地スタッフが60項目以上の家庭の経済状況等を把握するためのヒアリングを行います。

  • 最終学歴が中学校2年生までの10代のシングルマザーであること
  • 赤ちゃんが7か月以上で、授乳が日に3回以下になっていること
  • 家族が復学に協力的で、赤ちゃんのお世話をできる家族がいること

など、20項目以上の条件にマッチングする女の子に対して、支援契約を行います。

3.復 学 ・ 転 校 の 手 続 き

約3割の女の子がいじめや陰口を懸念し転校を希望しています。その場合には、自宅から徒歩1時間以内の学校で転校の手続きを行います。

最初の給付金は、学校に復学するための、バック・靴・制服代・教科書等の補助として使用され、次月からは、教育の遅れを取り戻すための放課後学習に5割、赤ちゃんの養育費5割(ミルク・オムツ等)に使用されます。

4.定 期 的 な 現 金 給 付 と モ ニ タ リ ン グ

毎月、医療費・交通費・食費・教育費・育児等に使用可能な、約2,000円の現金給付支援を実施します。

毎月の電話での経過観察や、3か月に1度、ケネマ県の事務局にて対面でヒアリングを行います。

家庭の経済状況、学習状況、赤ちゃんと女の子の健康状態などの50項目以上の質問を行います。

 

M E S S A G E 

 

現地スタッフからのメッセージ

専 任 現 地 ス タ ッ フ

ピディーア・ジョセフ

多くの女の子は小学校6年生から~中学校2年生で再スタートしますが、いじめを懸念し、元いた学校へは復学できないケースもあります。教育省や学校関係者と協働し、一人ひとり丁寧に学校へ再登録していきます。

この復学プログラムは女の子の未来、赤ちゃんの未来、シエラレオネの未来すべてを変えます。

今、世界の圧倒的な教育格差を縮めるために、今、あなたの力を託してください。

皆さんのご支援をよろしくお願いします。