男子中高生への性教育プログラムを新たにスタートしました!
シエラレオネ共和国ケネマ県では、約17%の10代の女の子が若年妊娠し、その後シングルマザーになることで、初等・中等教育を退学し、教育を続けることが困難な状況にあります。
NPO法人アラジは、問題の根本解決を目指し、ケネマ県の現地NGO「Global Village Network」と協働し、地域の中学校・高校での男子生徒へ向けた性教育プログラム「ハズバンドスクール」という新たな啓発活動を開始いたしました。
1. 事業概要-ハズバンドスクールとは
一人一冊テキストを配布し、男子中高生へむけた1時間のセッションを実施しました。
テキストでは、シエラレオネ地域特有の課題・価値観・認識等に十分留意し、シエラレオネ国内の法律・規則・政策等に沿って制作を行いました。
実施場所:ケネマ県 ルークスコマーシャル中学校・高校
実施人数:100名(男子中高生)
- 女性の権利・教育の重要性
- 生理や出産などのリプロダクティブヘルス
- 性加害を起こした場合や示談した場合の刑罰
- 女性が被害者となった場合の適切な連絡機関と電話番号
- 女性が被害者となった場合の治療・アフターケア・刑事訴訟のサイクル
- 性的同意の10パターン
などについて、理解を深めました。
最後に、一人1つのコンドームを配布し、コンドームの正しい装着方法をレクチャーしました。
2. 活動の背景
NPO法人アラジは、2021年5月から「10代のシングルマザー復学支援」を実施しています。
若年妊娠によって、初等・中等教育を中退している10代のシングルマザーが、再び教育の機会を獲得し、経済的な自立や夢への実現を後押しすることを目的とした活動です。
シエラレオネにおいて10代の女の子が妊娠にいたるまでには、主に4つの理由があります。
(1)レイプなどの性暴力
シエラレオネの10代の女の子の約5.6%が、同意のない性交渉を経験したことがあると答えています。シエラレオネの伝統文化の多くは女性差別的で、女性が男性に同意をとることは容易ではありません。
(2)学校で性教育が提供されていない
教育現場で充分な性教育がなされていません。シエラレオネのほとんどの学校には保健室がなく、また教員免許をもつ先生は全体の75%、女性教員は男性教員の5分の1程度しかおらず、同意のない性交渉を経験した女の子のうち6.4%が、男性教員からの性被害にあったと報告されています。
(3)家庭での性教育がタブーとされている
文化的・宗教的背景から、未婚女性の性行為はタブーとされ、男女の性や性行為の話を家庭内ですることはありません。
(4)避妊具へのアクセスの難しさ
貧困家庭において、避妊具であるコンドーム(1つ30円~100円程度)を購入することは非常に困難です。(農村部の世帯月収は平均月5,000円程度)
このような問題がある中で、男性側が避妊に理解を示さず、子育ての責任を取らず、女性だけがスティグマとされる社会を変えていくために、問題の根本解決を目指し、ケネマ県全体でのハズバンドスクールの実施を進めてまいります。
3. 事前・事後の意識調査
ハズバンドスクール実施にあたり、女性の性と権利に関する意識調査のため、ランダムに選ばれた男子中高生30名、男子中高生の保護者(父親10名・母親10名)に対し、事前・事後のアンケート調査にご協力いただきました。※保護者20名に対してはヒアリングインタビューを実施しました。
男子中高生に向けた事前の意識調査では、アンケート用紙を用い、34個の質問をしました。
男子生徒は女性の権利と健康に関して理解しているか、正しい避妊方法を理解しているか、また、性的同意について理解しているか、等についての調査をしました。
事後の意識調査では、事前調査の質問に「家族にハスバンドスクールの内容を話しましたか?」という質問を加えた35個の質問をし、ハズバンドスクールを通して、どのように意識変容したのかを比較しました。
4. 調査結果
ハズバンドスクールを経て意識調査では、以下の結果が出ました。
ヒアリング調査に回答した9割の保護者が、「妊娠した女子生徒の復学に賛成」であるということがわかりました。
事前調査では、アンケートに回答した男子生徒全員が「学校、家庭、地域で、性教育を受けたことがない」と回答しました。
「性交渉をする際に、コンドームを使うべきですか?」という質問に対して、事前の意識調査では13%の男子生徒が「はい」と答えました。しかし、ハズバンドスクール実施後の意識調査では、100%の男子生徒が「コンドームを使うべき」と回答しました。
「コンドームの付け方を知っていますか?」という質問に対して、ハズバンドスクールの実施前は、「知っている」と回答した男子生徒が0%でしたが、実施後は、100%の男子生徒が「知っている」と回答しました。
「女性の生理中は体調を気遣いますか?」という質問に対し、事前調査では83%の男子生徒が「いいえ」と答えたのに対し、事後調査では100%の男子生徒が「体調を気遣うべき」 という回答しました。
「10代のシングルマザーの復学に関して賛成ですか?反対ですか?」という質問に対して、事前調査では44%の男子生徒が「賛成」と答えました。若年妊娠した女の子が復学することで、クラスでいじめ等の問題が起きてしまうことを懸念する声や、シングルマザーになってしまったら、勉強せず赤ちゃんの世話をする必要がある、という回答が得られました。
これに対し、事後調査では調査に参加した100%の男子生徒が「賛成」と答え、多くが「女性が教育を続けることは国家の発展につながるから」や「女性にも学ぶ権利があるから」などの回答が得られました。
今回の事前・事後の意識調査及び、ハズバンドスクールの実施に協力したいただいた、現地パートナー団体「 Global Village Network 」と、100名の男子中高生の皆さんに、感謝申し上げます。
5. 今後の活動計画
NPO法人アラジでは、シングルマザー復学支援に加え、新しく開始した、ハズバンドスクールを継続的に開校し、ケネマ県全体での開校を目指して進めていきます。
来年度末までに、ケネマ県の10校1,200名の男子中高生に、ハズバンドスクールを届けることを目指してています。
10代のシングルマザー復学支援、そして新しく実施しているハズバンドスクールなど、さらに沢山の支援を届けるために、現在NPO法人アラジでは、マンスリーファンディングを実施しています!
この機会に、アラジの仲間として一緒に支援を届けていきませんか?
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特定非営利活動法人Alazi Dream Project
編集
栗田紗希(インターン)
江原莉菜(インターン)