NPO法人アラジ2018年下半期ポートロコ小学校支援:瀬谷による調査活動報告
2018年12月7日(金)に第6回現地渡航中(2018年11月29日~12月21日)のNPO法人アラジスタッフの瀬谷祐葵が、現地パートナー団体:HELP Children for Tomorrowの代表Abdukraman Kamara(以下、ラーマン)ともに、支援対象小学校である政府未承認小学校ROGBORO COMINITY PRIMARY SCHOOL(以下、ンボロ小学校)を訪問し、調査とともに、児童105名に対し教材支援を行いました。
※写真は2018年10月に村の大人たちが建設した小学校の様子
私たちが2016年より現地調査を開始し、2018年5月から教材支援を続けるンボロ小学校は、首都とポートロコ村の中間地点の森の中心地に位置しています。(首都フリータウンから続くPrince Alfred Road沿いのMakoloh Junctionをフリータウンより左手に進むとMamara村があり周辺に位置する)。村人の総人口は256名。政府による水道や電気等のインフラは未整備で、2016年のエボラ出血熱の流行時には、村人の大半がエボラ出血熱で亡くなりました。
※村の家々の様子 多くの村人は農業に従事し、自給自足の生活を行っている。
校舎が2010年に設立されたものの、2015年5月中旬に雨季のため全壊し、仮校舎のオーナーから家賃請求されるも支払いが滞り撤退を要求されるなどの課題を抱えていました。政府未承認小学校であるために、政府は給食や教師の給料などの支給をせず、2018年5月より始動した新政権(SLPP)のジュリアス・マーバ・ビオ氏が新たに宣言した小学校教育費無償化の恩恵はまったく受けていない状況です。
NPO法人アラジとしては、2018年5月にノート、チョーク、ペンなど最低限の教材を緊急支援として寄贈しました。現地パートナー団体:HELP Children for Tomorrowが制服支援などを定期的に行い、2018年10月には、地域の人たちが自ら地域の材料(土や木など)を用いて小学校を自前で建設しました。
政府への承認小学校への要請アプローチは却下され続けており、外国支援も望めず、以前として村の少ない現金収入や貧しい生活環境、劣悪な教育設備等の問題を抱えている地域の小学校の一つです。
現地パートナー団体:HELP Children for Tomorrowについて
現地パートナーHELP Children for Tomorrowとポートロコ村にて教材調達の様子(2017年11月)
代表:Abdukraman Kamara
団体スタッフ数:計6名
HELP Children for Tomorrowの活動として普段は、ペッパーやライスなどの栽培による売上げ(週3日:木金土稼働)をあげつつ、一部収入をンボロ小学校への教育支援へと充てています。
以前から政府に出向いたり手紙を送ったりしたことがあるものの、承認小学校へのアプローチは失敗に終わっています。再度手紙を書いて政府に取り合ってもらえるよう現在模索中であるとのことです。
ンボロ小学校について
※Google Mapによるンボロ小学校の位置
※2015年校舎倒壊の際に現地パートナー団体が作成したファンドレイジング用資料
児童数:約105名(男子53名/女子52名)
教員:2名(女性25歳:1・2年生の担当)(男性:52歳:3~6年生の担当)
※2名とも携帯電話不所持。2学年混合で授業を実施しており、男性教員は2クラスに分けて板書とティーチングを交互に行う。
授業内容:英語、数学、社会、理科、RME(Realistic Mathematics Education)、PHE(Physical Health Education)、vocational education(農業経済など)
給料:基本的に無給
休業:年末年始は12/21から2週間、4月に2週間、雨季のため7月下旬から9月頭の約1カ月半(6週間ほど)
2018年下半期の支援教材について
- テキストブック:生徒人数分
- 鉛筆(低学年用):10ダース120本
- ボールペン(高学年用):15ダース180本
- 定規(学校用):5ダース60本
- アルコールジェル(300ml)28セット
計1,500,000Le(176$=20,324円)
※今回のご支援は、近畿大学 学生ボランティア団体”大和” 様のご支援を活用させていただきました。ご支援いただき本当にありがとうございました。
保護者や地域の生活環境について(2名へのインタビュー)
保護者:アミナタ(40歳手前)さんへのインタビュー
●家族構成
6名(アミナタさんと子ども5人)
●現金収入はありますか?
ありません。旦那さんを亡くし、自分達で食べるために、お米の栽培を行っています。
●アクセスできる病院はありますか?
5マイル以上離れていて、バイクで2.5時間以上かかります。
●子どもに将来就いて欲しい職業は何ですか?
子どもには弁護士、銀行員などたくさん収入が得られる職業に就いて欲しいです。
●今一番必要な支援はなんですか?
学校建設のための支援をしてほしい。
保護者:エルサンコ(30歳代)さんへのインタビュー
※今年新しく生まれた末娘の「ユメ」
●家族構成
6名(旦那さんと子どもが4人)
●現金収入はありますか?
夫婦で農業(米とナッツ)を営んでいます。
●今一番必要な支援はなんですか?
ビジネスを拡大するための小規模投資をして欲しいです。
今回の保護者へのインタビューでは、労働環境に関しては、例えば何か栽培したものを売る場合、売る場所へ行くための交通手段がなく、売り上げても交通費やコストが高すぎる、そもそも準備段階に必要な資金がないなどの問題があって働きたくても働けないという状況でした。電話すら持っていない人が大半で、通信環境も悪く、Wi-Fiは接続不可能な状態です。
子どもへのインタビュー
ブルツフェ(8歳)へのインタビュー
●家族構成
両親と妹の4人家族
●将来の夢は何ですか?
教育大臣になりたいです。
●好きな教科は何ですか?
社会
●学校は好きですか?
病気の時はさすがに学校へ行きたくないけど、基本的には学校が好きで毎日通いたいよ。
●今一番必要な支援は何か
良い学校を作ってほしい。トイレもお水もないし、机も椅子もないから。
●ごはんはしっかり食べられていますか?
今日はまだ何も食べていないです(インタビュー時夕方の17時過ぎ)
※昨日ガリを食べたとのこと。(1食)
●病気になったときに、かけつけられる病院はありますか?
頭が痛くて病院へ行ったときは8マイル先(約12㎞先)の病院へ歩いて行って、2時間半くらいかかったよ。学校へも2時間半くらいかけて毎日通っているんだ。
調査報告のまとめ-政府の主張-
シエラレオネの地方全体で、このように両親や村の有志が立ち上がり自前で建設する、所謂「ペアレンツスクール」の数は把握できておらず、多くは教職員の教育レベルの問題や、無報酬問題、またトイレや基本的教育設備の不足など、同様の問題を抱えるインフラにアクセスできない密林の小学校は多く存在すると思われます。
政府の主張は、コンクリートの建物にトイレなどが付帯しており、先生がきちんと充実した教育を行っていることが証明できる充分な教育機関であるかどうかが条件とのことで、学校建設自体を外国援助に初期段階から依存する承認プロセス自体が問題であり、すべての子どもに教育を受けさせるべきと主張する新政権の対応とはかけはなれています。
NPO法人アラジとしては、政府側にぜひとも早急に対処していただくべく、今後も現地パートナーとともに政府承認へのアプローチと、承認までのプロセス変更の要求を続け、上半期・下半期の渡航タイミングにあわせ、緊急の教材支援を続けていきます。
今後の教材支援・政府への承認アプローチ・現地調査渡航費等に引き続き皆様のご支援を必要としています。ご関心のある方はぜひマンスリーサポーターの登録もしくは、単発のご支援のほど、よろしくお願いいたします。